◆◇六つの紋章をめぐる物語◇◆

創世記

10.土の章 デッサロッサ、地を泳ぐ


3

土の息子は冒険を止め、この地に居を構えた。
彼もその後、風の息子と同じく女の姿の精霊を召喚し、子供たちを得て土の種族の始祖となった。

土の息子は、このあっけない冒険の結末に決して満足していなかった。
彼の予定では、もっと広い世界を見聞するはずだった。
しかし巨魚が残した巨大な輝石の力は、後に残して行くには余りにも莫大だった。

巨魚の莫大な魔力に囚われ、その地に縛られた人生に、土の息子は死ぬまで苛まれた。
彼は不機嫌なデッサロッサと子供たちに呼ばれ、恐れられていた。
土の種族は他の種族に比べて所有欲、特に魔石に対する執着に囚われやすいと言われているが、彼らは始祖デッサロッサに責任があると考えている。

しかし、デッサロッサが巨魚の怪物に出会うことがなく、アズヴァーン世界を巡る冒険を続けていたら、彼とその種族はどうなっていただろう?
アズヴァーン世界が無限に広がっていると無邪気に信じていた彼が、土の精気で形成された大陸がこの世界にはたったの一つしかなく、後は風と水に囲まれているのだと知ったら、どうなっていただろう。
果たして今日の土の種族の繁栄があっただろうか?

巨魚の怪物はそこまで見越してデッサロッサを待ち構えていたのだろうか?
アズヴァーンが生み出した精霊たちが、今日の我々の世界を創るために正しく働くことができたのは、なぜだろう?